動物の診療 第14回 丁寧に急げ!
(2019.6.5)

 近くの動物病院にて腫瘍があると診断されて紹介来院のうさぎさん(3歳)。よくある子宮の癌かな・・・・と思って、触診してみると腹部の左半分が大きく膨れていてガチガチに硬い。なんか違う。画像検査では左後腹膜領域に変な塊があります。血液検査では白血球や腎機能などの様々な数値が測定限界を振り切ってぶっ飛んでいます。体温も血圧も低くかなり状態は悪そうです。
 
 この手の病巣で白血球がぶっ飛んでるケースでは全身性に炎症の影響があり、一刻も早く病巣を取って術後の集中治療に全てをかけます。時間との勝負です。必要最小限の内科療法を施し、同時に麻酔をかけて緊急手術に入ります。

 開腹して塊の一部が見えてきました壊死して膿瘍化しているように見えます。腹大動脈から分岐する腎動脈に接続しています。この塊はどうやら"カツテ腎臓ダッタ何カ"のようです。

 処理すべき血管が多いのと基部が背中の筋肉に内側から密着していて手強そうです。状態が悪すぎるため最小の出血量かつ最速で摘出しなければなりません。脳内BGMはT-SQUAREのtruthが流れています。丁寧に急げー!




 無数の血管をひたすら処理しながら病巣と正常組織の分離を行います。病巣とつながっている子宮卵巣も含めて分離します。最期に腎動脈・腎静脈・尿管の順に処理して摘出します。

 なんとか摘出しました。腎臓がすごいことになってますね。


 術後、うさぎさんは順調に回復し、無事退院しました。病理検査の結果、腎臓の悪性腫瘍でしたが取り切れているようです。

 3歳でこんなのができちゃうのは珍しいケースだと思いますが無いわけじゃないんですよね。定期健診は大事です。ちなみによくある子宮の悪性腫瘍ですが、私が経験した中で最年少は2歳です。